HANDSケニア事務所は、3年間にわたる幼児の栄養改善プロジェクト、平成30年度外務省NGO連携無償資金協力による「ケニア共和国ケリチョー郡ECDEセンターを中心としたコミュニティによる幼児栄養改善事業」の期間延長の後、今その終了を3か月後(7月中旬)に控えています。とはいえ、これまで共に歩んできたケリチョー郡の幼稚園31校の日々の経験に耳を傾けそこから学ぶことを止めてしまったわけではありません。今回は、プロジェクトで推進してきた幼稚園での栄養改善活動の持続発展に向けた試みの一つを、3回にわけてご紹介します。
↑事業地でよく目にする風景:メイズ(トウモロコシ)畑
3月末、ちょうどサツマイモやキャッサバの植え付け時期に差し掛かる頃、私たちは地域保健担当官のヒラリー・キプランガットさんと農業局員のエミリー・トオさんと共にチェプコサ幼稚園の住民会議を訪れることにしました。1月、プロジェクトへの参加当初から継続していた給食が続かなくなった状況に陥った幼稚園です。31校のうち初めての経験です。
この幼稚園は園児数が40人にも満たない小さな幼稚園で、そのため給食も少ない家庭数で支えなければなりません。またこの地域一帯は人の手では撤去不可能な大きな岩が多い傾斜地で、そのために畑の作物は日照りには特に弱いという特徴を持っています。HANDSの事業対象地では今年は異常に長く厳しい乾季が続きました。そんな中、トオ農業局員はチェプコサ幼稚園のモデル菜園のモニタリング、そしてキプランガット地域保健担当官は幼稚園の他の活動のモニタリングの結果をそれぞれ持ち寄り、私たちはプロジェクトととしてできることを検討しました。チェプコサ幼稚園が給食を再開し、そしてその後一日たりとも給食のない日を作らないために。
さて、この地域の幼稚園の給食のことは今年1月にケニア活動ニュースに3回連載(現在でもHANDSのホームページ、フェイスブックで読むことができます)でお伝えしましたが、一般的にメイズ(トウモロコシ)やミレット、そしてソーガムといった穀類の粉を同比率で混ぜて作った雑穀粥が供されます。中でもメイズの粉は必須の材料です。ところが、毎年1月というのはメイズの粉が各家庭一番不足する時期に当たり、給食継続が最も難しくなります。
そこで私たちは考えました。「給食=雑穀粥。雑穀粥がなければ給食もない」という思い込みが邪魔しているのではないだろうか、と。実はこれは、トオ農業局員やキプランガット地域保健担当官だけでなく、HANDSの現地職員にとっても思いがけない気づきでした。私たちはチェプコサ幼稚園関係者に対してこの思い込みにチャレンジするとともに、何が何でも給食を続けることの大切さと雑穀が少なくても、あるいは全くなくても給食を続けられるよう具体的なアイデアを提供するという案を持って住民会議に臨みました。
・学校給食は、メイズ(トウモロコシ)やミレット、ソーガムなど雑穀がなくなったからといって止めなければならないことはない。雑穀が少なくなっても続ける方法はある。
・雑穀のみの粥でなく、干ばつに強い作物、例えばサツマイモやキャッサバを給食に積極的に採り入れる。モデル菜園ではチェプコサの土地でも強い果物の栽培にも力を入れる。
←チェプコサ幼稚園のモデル菜園(2021年8月):トオ農業局員(右)からパッションフルーツの支柱の立て方を習う地域保健ボランティア。背景の建物は幼稚園の教室、左には実ったソーガム、手前には収穫後の伝統野菜ブラックナイトシェードが見える。