幼児の栄養改善プロジェクト「開かれた幼稚園:ケリチョー郡幼児の栄養改善に向けて」(JICA草の根技術協力プロジェクト)では、ケリチョー郡でも珍しい試みとして、2,3歳児の親子教室“プレイサークル”を、対象幼稚園の教室を拝借し毎月実施している。
2,3歳というのはここでは特別な意味を持つ年齢で、特に4歳で幼稚園年少に上がるまでの期間、保健局の介入が届かなくなるいわば忘れ去られる年齢である。1歳半で予防接種が完了すると公立私立を問わず、病院や保健施設ではその後のビタミンA剤の投与や成長モニタリングの重要性が説かれることはほとんどないらしい。
保健局では「5歳までは引き続き保健局の責任範囲だが、家族が幼児を連れてきてくれなければ、手の施しようがない」ということのようだ。HANDSではそんなところにちょっとした風穴を開けるつもりで、住民に近くて親しみのある幼稚園を開催の場とし、いずれは保健局の支援と共に幼稚園の地域貢献事業として継続される形にして残していくことを目指して走り出した。5歳まで・・・。
これはケニアでも配布されている母子手帳がカバーする年齢だ(写真1)。
コーヒー栽培が盛んな西キプケリオン準郡にあるカプレリット幼稚園の10月プレイサークルには、一家総出で行うコーヒー豆の収穫の最盛期に当たってしまったが、5人の2,3歳児が母親に連れられてきた(写真2)。地域保健ボランティア達による体重測定(写真3)と親子の遊びの時間の後、この日は、衛生習慣、ビタミンAと虫下しを定期的に飲む重要性が保健局地域保健担当官によって楽しく語られた。
母子手帳には確かに、予防接種を完了するまでの年齢に関する情報や記録のための表は多いが、その後は、成長曲線(5歳まで)(写真4)、ビタミンAや虫下しを飲んだ日を記録する表(写真5)、そして父親が育児に参加しているイラストを盛り込んだ乳幼児の世話と接し方を示す表などがある(写真6)。
カプレリット幼稚園でのプレイサークルに集まった家庭では、8割の4家庭が母子手帳を持ってきていた。なるほど、ビタミンAも虫下しも記録は1歳半を最後にぴったりと表の半分までで終わっている。参加者は11月のアウトリーチクリニックでビタミンAと虫下しを飲ませることを約束し、間食用のバナナパンケーキを試食し解散した。
さて、母子手帳だが、プロジェクトの他の対象幼稚園開催のプレイサークルでは、半数以上の家庭が失くしてしまっている。せめて成長モニタリングだけは継続してほしい。毎月成長モニタリングのために保健施設に行けば、そこでビタミンAも虫下しも定期的に飲むことになる。HANDSの現地職員の願いだ(写真7)。HANDSではプレイサークルでの母子手帳の活用を地道に続け、一方で、予防接種完了時に看護師が一言でいいので「母子手帳を持って成長モニタリングに来るように」と予防接種完了のお祝いの言葉と共に家族に呼び掛けてくれるようになるにはどうしたらよいかを考えることにした。
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HANDSでは日本国内を対象に小さく生まれた赤ちゃんのための母子手帳のサブブック
“リトルベビーハンドブック”に関する活動を行っています。
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