ケニアの子どもたちと守る生物多様性プロジェクトのご報告(講習会の開催)

 HANDSケニアでは、ケニアの次世代を担う子供たちと地域の大人たちが、生物多様性の重要性を理解し、それを守る行動をとることを目的としたプロジェクト(地球環境基金助成金)で、子供たちの身近な指導者である小学校教員や地域の農家へ向けた講習会を開催しました。
サトウキビ畑が広がるケニア西部ケリチョ―郡キプシテット村の住民18人(40代から70代の男女)を対象として3日間に渡り、SEPLSワークショップを行いました。
SEPLSとは「Socio-Ecological Production Landscapes and Seascapes」の略語で、人々の生活や文化と密接に結びついた地域の生態系や景観のことを指します。日本でいうところの里地里山の保全・活用活動にあたります。


左上:自分たちの暮らす村の地形や景観を理解するため参加者は床を使って地図を作りました。積極的に意見を交わし、最終的に大きな平面地図が完成しました。
右上:SEPLSワークショップでの学びを20項目に渡り、自己分析し点数化しています。

 本来豊かな自然に恵まれたケニアですが、その一方で環境破壊や気候変動の影響で干ばつや洪水などの様々な環境問題を抱えています。このワークショップを通して、自分たちの先祖が守り、受け継いできた土地の地理的な特徴、景観、季節や気候に合わせた農業の年間計画について学びを深めました。参加者への課題として、この地域に自生する野菜や果物、樹木、薬草の持ち寄りをお願いしたところ、60種を超える伝統植物のサンプルが集まりました。中には風土病の一つであるマラリアに効果が期待できる薬草もありました。


左上:参加者が持ち寄った植物を分類し、それらの名前を現地語で聞き取りしました。中には多くの薬草があり、様々な伝統的な知恵は今も住民に受け継がれていました。
右上:HANDSアドバイザーの民族植物学博士から自生種の植物について講義を受けています。参加者はメモをとりながら真剣に聞き入っていました。HANDS現地スタッフもいつになく真剣な表情です。

 これらのサンプルを分類することで、地域の自然資源の価値を改めて認識できたことは大きな成果でした。参加者は地域をとりまく環境や景観、生産性の向上について様々な視点から評価しました。その結果として植林や農業を通し、より良い未来を切り開いていくため、いくつかの持続可能な目標を立てました。HANDSケニアは、参加者達の意識や行動の変容を見届けるために、今後も定期的にフォローアップをしていく予定です。


上:住民が持ち寄った植物サンプルの一部。ワークショップでは約60種の植物全てをこのように記録しました。