伝統知を継承するハーバリストとの交流
HANDSケニアでは現在3年間に渡る生物多様性プロジェクトの成果物として地域に伝わる郷土食や伝統的な作物、自生種のハーブや樹木を記録し、生物多様性を守り、保存することを目的とした写真集の制作に取り組んでいます。アフリカ大陸を南北に縦断するグレートリフトバレーに位置するケリチョー郡、ナロク郡、ケニア西部に位置するビヒガ郡、それぞれ異なる民族が暮らす地域から伝統的なアイテム(穀物、豆類、野菜、果物、ハーブ、樹木、きのこなど)を掲載する予定です。
活動先小学校の子どもたちとコミュニティの関係者が一丸となり、地域の生物多様性を記録する作業を進めてきました。写真集に掲載する情報の最終確認を目的として地域の有識者を訪問し、昔から伝わるハーブの効能や使い方、その他の伝統的なアイテムについて貴重な情報を得ることができました。
- 写真1:伝統知を持つ高齢女性。ケリチョ―郡周辺に暮らすカレンジン族に伝わる伝統的な発酵乳“ムルシック”を作る際に欠かせないハーブ、この枝葉の炭と新鮮な牛乳を一緒に発酵させると説明してくれた
- 写真2:竹の芯の部分を利用した手製のコップ。薬草の計量や子どもに薬を飲ませる時に使うそうだ。
- 写真3:ケリチョ―郡の農村地域でハーバリストとして活躍する女性2人(右側)にインタビューするHANDSスタッフの様子。庭に自生するハーブを摘んで患者の症状に合わせてその場で処方するそうだ。
- 写真4:ビヒガ郡のハーバリストの男性は庭に自生するハーブの根を保管し、患者に処方している。このハーブは咳や喉の痛みを和らげる効果があり、大人は根の部分をそのまま噛み、子どもへは煮だしたものを服用させる。
- 写真5:広大な敷地で多くのハーブや伝統的な果物を栽培している。写真は今が旬の伝統種のパッションフルーツ、ビタミンCを多く含み、栄養豊富で免疫力を高める効果が期待できる。
写真集はプロジェクトの成果物としてだけでなく、地域の若い世代の人々に知られていない、もしくは今はあまり使われていない伝統的なアイテムを再発見させ、それを保存し再生するためのきっかけづくりになるツールとして活用されることを願っています。この活動を通してケニアの子どもたちが生物多様性を守りながら伝統知を探求し、地域の伝統的な作物や郷土食文化を発見し、フードセキュリティ(食料安全保障)を高めることができるよう目指しています。尚、写真集の出版は2025年3月を予定しており、今後は電子版としてオンラインでも共有されます。
本プロジェクトは環境再生保全機構地球環境基金の助成により実施しています。