この実施マニュアルは、今年3月にプロジェクトが終了した後でも700校以上のケリチョー郡の公立幼稚園が、プロジェクトで実施した給食とモデル学校菜園、成長モニタリング等の栄養改善プログラムを独自に郡政府と協力しながら実施できることを目指して執筆・出版したガイドブックです。プロジェクトに参加した幼稚園のユニークな成功例、そして郡及び準郡政府関係者の生の声と共に写真や図解を使って分かりやすく解説しています。
今回から3回に分けてケリチョー郡の幼稚園の給食(10時のおやつ)とはいったいどんなものかご紹介しましょう。
●現在のケリチョー郡の公立幼稚園は朝からお昼までのところが一般的で、満4歳と満5歳児の2クラスがあり、1クラスは15人ぐらいから多い所で30人ぐらいです。幼稚園での給食への公的援助はなく、幼稚園を併設する小学校長を始めとする運営委員会が中心となって保護者へ呼びかけ合意を得、各家庭が給食費や材料(トウモロコシの粉)を出し合います。給食費では調理師への給与も賄わなければなりません。給食の一般的な献立は砂糖を加え甘くした雑穀粥ですが、砂糖を買うお金は給食費にとって大きな負担です。また、毎年1月は給食の継続には難しい時期で、家庭でもトウモロコシの粉が少なくなり、材料がつき給食の継続をあきらめそのまま再開しないこともよくあります。2019年開始の外務省NGO連携無償資金協力による現行プロジェクト「ケリチョー郡ECDEセンター(幼稚園)を中心としたコミュニティによる幼児の栄養改善事業」の対象幼稚園で給食を実施していたのは当時ほんの10%という数でした。
●HANDSがプロジェクトで対象にしてきたのはケリチョー郡の中でも経済・社会指標の低い農村地域です。幼稚園はほとんどが調理室を持たず、隣接する教会の調理室を借りたり、保護者たちがお金を出し合ったり、住民から寄付を仰いだりして園庭の隅にトタンで屋根と囲いだけの建物を作ります。簡単でも囲いがあれば通りすがりのヤギや鶏の侵入は防げます。調理は煙の中、三石かまどで行うのが一般的です。薪もやはり家庭から持ち寄ります。水道も引かれているところはほとんどなく、井戸や雨水などの貯水タンクがない幼稚園では、調理師さんが毎朝自分のロバの背に水タンクを括り付け、近くの川で汲んだ水を調理に使う幼稚園もあります。