「職員たちと共に-創作絵本“おばあちゃんがくれた不思議なめんどり”」(3)

色々な人の手を借りてできたこの絵本の挿絵は、JICA海外協力隊員さんで、ケリチョー更生学校で活動をしている宇佐美恵さんがボランティアで引き受けてくれた。表紙に描いてくれためんどりは、「パーフェクトなめんどりだ」(写真9→ 表紙ドラフト)と、HANDS職員だけでなくプロジェクトに参加している地域保健ボランティアさんたちをも唸らせた。


(↑写真10 三石かまど カゴモン幼稚園) (↑写真11 家庭用無煙かまど)
卵を父親一人だけでなく家族みなで分けて食べるシーンも描いてもらった。一般的に食事はたいていお勝手でするが、家族団らんの食事は事業地の農村の住居環境ではなかなかかなわない。というのは、調理はまだ三石かまどが一般的で(写真10 三石かまど カゴモン幼稚園)、煙のために父親は一人で屋外で食事を済ますことが多いからだ。そこで、無煙かまどという(写真11)、煙突付きでしかも熱効率の良いかまどがあると家族だんらんが可能になる。これはHANDSが無煙かまどの普及に力を入れていた時期の大発見であった。

宇佐美さんには、家族団らんの夕食風景の背景にさりげなく無煙かまどを描いてもらった。そして、家庭菜園も、プロジェクトの対象幼稚園に作られたモデル菜園と同じ8区画のデザインで、果物の木を含め5種類にわたる作物が育っている。最後に、お祖母ちゃんが住んでいる山の向こうにまでかかっている虹を描いてもらった(写真12)。(↑写真12 お話の最終ページ ドラフト)

絵本はドラフト段階で、ケリチョー郡教育局のトップの人たちから幼稚園で読み聞かせに使用してもよい、というお墨付きをもらった。プロジェクト対象幼稚園の校長先生や幼稚園の先生たちが集まった「学校と地域の保健」という研修時には読み聞かせを体験してもらった。絵本は日本語、英語、スワヒリ語、そしてキプシギス語版がある。英語、スワヒリ語、そしてキプシギス語の順で読んだ。彼らの母語であるキプシギス語で読み始めると、誰の表情も生き生きとし、まるで絵本に吸い寄せられるかのように聞き入っていた。

たった3行に集約された家族へのメッセージ「卵はあなたの幼いお子さんの健康のためにはとても優れた食品です。お子さんのおやつや家族の夕食などで卵を使いましょう。まず、家族で1週間に卵を1個か2個食べるようにしてみましょう。」(写真13)を幼児の家庭に届けるために考えた絵本。子供たちはどんな表情を見せるだろうか。(終わり)
(↑写真13 家族へのメッセージ案)