「職員たちと共に-創作絵本“おばあちゃんがくれた不思議なめんどり”」(2)

絵本の開発に着手したころ、職員たちは自分の経験に照らし合わせお祖母ちゃんがめんどりをくれるという風習が卵の消費行動にはどうしても結びつけられない様子だった。職員の一人は「僕はその卵を売って鉛筆を買った」と報告してくれた。別な職員は「まだその子が小さいからめんどりだけど、卵を売ったりひよこを育てて鶏を増やし、また卵を売って貯金し、まずは山羊、いずれは牛が買えるようになってほしいとお祖母ちゃんは思っている」と語ってくれた。

日本人の私が立てた仮説はというと「家庭の中で幼児がめんどりの所有権を与えられることで、そのめんどりが産む卵もその子のものになるとは言えないだろうか。もしそうだとすれば、その卵はその他の卵と同じものとして売られてしまうのではなく、その子の口に入る可能性を高めることになりはしないか」というもの。

起業家精神育成のためと理解されているこの風習を、幼児が楽しめると同時に卵の摂取を推進するための家族へのメッセージを無理なく運んでくれるお話にどう仕立てるかは、長く未解決だった。そんな時、ある職員に彼のお祖母さんへのインタビューを頼んでみた←(写真7 ルーシーお祖母さんへの感謝の言葉ドラフト)。
数日後、「僕のお祖母さんは開口一番『恵みを与えるということだよ』と言った」という。

「恵みを与える」というコンセプトをもらったおかげで、お祖母ちゃんがくれためんどりは不思議な卵を産むことで、その日が卵を料理して(健康のために)家族みなで食べる日であることを家族に告げてくれる、という話の大筋が浮かんだ。そして、幼児の間食(卵1個を使用)と家族の夕食(卵2個を使用)の場面で卵を使い、添える野菜は卵を売ったお金で買う野菜ではなく、家庭菜園で採れた自家製の伝統野菜を使うことをアピールした。

そして不思議な卵とは、虹色の卵(写真8→)。ただ、このめんどりの不思議なところは卵の色に止まらず、一回に3個も産むという点と、若いひよこが育つ間でも卵を産むという点。鶏は一日に卵は一つしか産まないことも、ひよこが若い間、子育て中のめんどりは卵は産まないという事実も恥ずかしながら日本人の私は知らなかった。

ここで私たちは、絵本の題名を「おばあちゃんがくれためんどり」から「おばあちゃんがくれた不思議なめんどり」へと改名することにした。