HANDSケニア事務所では、次世代を担う子ども達が、生物多様性の重要性を理解し、それを守る行動をとることを目的としたプロジェクト(地球環境基金助成金)を進めています。
ケリチョ―郡チェラモール小学校の子ども達と一緒に地域に伝わる伝統郷土食について学びました。ケニアでは朝食としてお粥をよく食べます。現地公用語のスワヒリ語でウジ(Uji)といいます。日本のお粥とは全く別物で材料はトウモロコシ粉をベースに雑穀やキャッサバ粉など様々なものをブレンドし、トロトロに煮詰めたものに甘味をつけて大きなマグカップに入れて飲みます。(写真1)家庭によって材料の配合が違いますし、また手軽にスーパーマーケットでウジのミックス粉や熱湯に溶くだけで簡単に作れるものも売られています。
ケニアは約58種(諸説あり)の異なる民族で構成される多民族国家で地域や民族ごとに独特の食文化を持っています。今回はキプシギス(Kipsigis)族に伝わる特別な発酵ウジの作り方を学びました。この地域では12歳から15歳の男児を対象として彼らの成長を祝う通過儀礼があり、その際にこの発酵ウジがふるまわれます。伝統知を継承する目的で地域の高齢女性が子ども達の前で実演しました。
なんでも特別な場所で栽培されたミレット(キビの一種)を収穫後に発酵させ(写真2)、それを牛革の上に置き、大きな石を使って力を込めて挽いていきます。(写真3)。
この牛革や石も神聖な特別なものだそうで儀式専用に大切に使われているそうです。この石は元々この地域のものではなく、遠く離れた隣のナンディ郡の川から厳選されたものを物々交換で手に入れた貴重なものであると聞きました。 通常のウジは出来立ての熱々をいただきますが、これは儀式の数日前に仕込んで発酵させてから儀式の当日に提供されます。今回は実演のため特別に仕込みが終了した発酵ウジが用意されました。容器をのぞきこむとブクブクと細かい泡が立っていました。(写真4)
子ども達と一緒にHANDSスタッフも試飲しました(写真5)。穀物を発酵させたことによる酸味とかすかな甘味があり、例えると甘酒とプレーンヨーグルトを混ぜたような味でした。
興味深いことに発酵が未熟で甘みがあるウジは子ども達に、数日間そのまま発酵が進むとアルコールが醸成されて味が完全に変わり、それは大人が楽しむそうです。
泡の状態を見て、発酵がうまく進んでいるかどうか判断するそうですが、万が一、発酵ウジが上手に仕上がらない時は、縁起が悪いため、通過儀礼自体が中止になります。
伝統的な郷土食は地域固有の作物を使い、自然環境との深い結びつきを持ち、その地域の生物多様性を保つための重要な要素となっています。これらの食文化を守ることは、自然環境の保護にもつながるため、非常に価値のあることです。