ルヤ族の伝統的な郷土料理-ケニアの子どもたちと守る生物多様性プロジェクト(地球環境基金) –

HANDSケニア事務所では、次世代を担う子ども達が、生物多様性の重要性を理解し、郷土の作物や食文化を守り、継承することを目的としたプロジェクト(地球環境基金助成金)を進めています。

事務所のあるケリチョ―郡から80km程離れたビヒガ郡に活動先のシャマホホ小学校があります。
ケニアは約58種(諸説あり)の異なる民族で構成される多民族国家で地域や民族ごとに独特の食文化を持っています。この地域の民族であるルヤ(Luhya)族に伝わる郷土料理を子ども達が学びました。

写真1:ケニアのルヤ族の郷土料理
ムシェネと付け合わせの自生種の野草

緑豊かな農業中心のこの町はいたるところでバナナ、お茶、さつまいも、様々な野菜が栽培されています。この地域に伝わる郷土料理ムシェネ(Mushenye)の作り方を学びました(写真1)。作るのに手間がかかり、現代では忘れられつつある家庭料理です。講師を担当したのは地域に暮らす伝統知が豊かな高齢の女性です(写真2)。ムシェネは柔らかく茹でたさつまいもと豆を一緒につぶしたもので、(写真3)調味料は塩を少しだけ、とてもシンプルな料理です。付け合わせはこの地域で自生している野草やかぼちゃの葉を柔らかく茹でたものを添えます。伝統的な調理の知恵として、バナナの葉を調理の様々なシーンで活用しています。

バナナの葉を燃やした灰は野菜を茹でる際にアク抜きの効果があり、さらに柔らかくする作用もあります。

写真4:苦みのある野草はバナナの皮で包んで煮ると柔らかく味もマイルドに

そして大きなバナナの葉はさつまいもを茹でるときに内蓋代わりになり、野菜を調理する時にはバナナの皮に包むことでしっとりとした蒸し煮が完成します(写真4)。さらに火力の節約になり、一石二鳥の調理方法です。しかしながら現代のライフスタイルや便利さを求める傾向によってこのような伝統的な調理方法は段々と忘れられてしまうかもしれません。子ども達は今まで知らなかった、この昔ながらの調理方法を真剣な眼差しでノートを取りながら見ていました(写真5)。

写真5:子ども達は真剣な眼差しで調理実演に集中していました


実演で使った野菜は地域の野草を使っており、子ども達が収穫してきたものです。
ムシェネは豆とさつまいもの素材の味そのままでほんのりと甘く、シンプルな料理です。付け合わせの野菜はとても柔らかく苦みもなく食べやすいものでした。驚いたことにこれらの料理は油が全く使用されていないのです。現在のケニア料理は一般的に炒める調理が多いのですが、ルヤ族の伝統的な調理は油を使わないそうです。

写真6:地域の食材を使ったバランスのよい
昼食をいただきました

子ども達は色々な食材を組み合わせて、たんぱく質、炭水化物、ビタミンやミネラルを取り揃えてバランスよく食べることも同時に学びました。(写真6)。地域の伝統的な郷土食は単なる食べ物ではなく、その地域の文化や歴史の一部でもあります。多くの伝統料理は地域の食文化を守るだけでなく、生物多様性を保つための知恵も含んでいます。参加した子ども達はキラキラした瞳で早速、家族に作り方を紹介すると約束してくれました。子ども達を通して地域の伝統知が未来へ語り継がれていくようにこの活動を続けて行きます。