2022年から実施している幼児の栄養改善プロジェクト(※補1) では、地域保健プロモーター (CHP)さんたちが全ての活動で大活躍している。その中でも、各自が担当している村の家々を定期的に訪問する活動は、幼児の食事調査、幼児の栄養や家庭菜園へのアドバイス、さらに幼児や家族の衛生習慣の推進と多岐にわたった内容となっている。HANDSではそれぞれの内容で、CHPさんたちが効果的に指導ができるよう、教材を作りそれを使った指導方法を研修で学んでもらっている。
ある日事務所で、「ヘルシー・イーティング・ピラミッド」と言う三角形のイラスト(写真1)(※補2 )のことを職員たちと話題にしていた。1990年代米国から発信されたフード・ガイド・ピラミッドを模したケニア版のフードガイド。果物や野菜の中にはケニアではあまり見かけないものも混ざっているが、炭水化物の部類にはケニアで広く食されているメイズやキャッサバ、グリーンバナナが写っている。一日にどれぐらい食べたらよいかはサービング数で表示されている。「でも、これ、どうしても使えない。」「なぜか役に立たないんだよね。」 プロジェクトでは、2歳から5歳までの幼児の食事がどの程度よいかを知るために、IDDS(Individual Dietary Diversity Scores)(※補3)という、食事の質を食品群の数で計る評価ツールを使っている。このツールでCHPさんたちは訪問先の幼児の一日の食事を調べる(写真2)。プロジェクト開始後(2023年10月)に実施した調査では、幼児が食べていた食事は最低でも4つの食品群からなっていた。大多数の幼児は5品群を食べていた。典型的な4食品群のパターンは、トウモロコシの粉で作る主食ウガリ、キャベツやケールの炒め物とミルクティー。これは4食品群を満たしている。1.穀物やイモ類、2.野菜や果物(ビタミンAは特に豊富ではない種類)、3.乳(牛乳が多い)と4.油脂を使った料理。そして典型的な5食品群の食事パターンとは、これに豆の煮もの(5.豆類)が加わる。
家庭菜園の指導もしているCHPさんたちは食事調査の結果を見て次回の家庭訪問時の目標を各自で立てる。第6の食品群として、ビタミンAの特に豊富な野菜や果物(カボチャやサツマイモなど)の菜園での栽培を推進目標にしたりする。家庭菜園で穫れれば、それが自然と食卓に乗るからだ。さらに、創作絵本「おばあちゃんがくれたふしぎなめんどり」を読んで聞かせ卵の栄養価について語ることもある。こうして、食品群の数を一つずつ増やしていくよう、幼児の家族を導く。
創作絵本「おばあちゃんがくれたふしぎなめんどり」についてはこちらから↓
「職員たちと共に-創作絵本“おばあちゃんがくれた不思議なめんどり”」(1)
「職員たちと共に-創作絵本“おばあちゃんがくれた不思議なめんどり”」(2)
「職員たちと共に-創作絵本“おばあちゃんがくれた不思議なめんどり”」(3)
HANDSでは、かつて野菜や果物の摂取を推奨した時、それまで豆を食べていた幼児が、野菜や果物は食べるようになったものの豆を食べなくなってしまった、といういわば単なる「置き換え」が起こってしまったという例を経験した。食品群の数を一つずつ増やしていくという考え方を、どうやったら分かりやすく伝えられるだろうか。どういう教材を創れば、CHPさんたちが効果的に楽しくそれを伝えることができるだろうか。三角形のイラストをそれぞれが思い描いていたのはこの時だった。
※補1:プロジェクト名「地域に開かれた幼稚園:ケリチョー郡の幼児の栄養改善に向けて」JICA草の根パートナー型2022‐2026)
※補2:出典: “Applied Basic Agri-Nutrition Resource Manual for Trainers” https://www.advancingnutrition.org/sites/default/files/2021-03/tagged_Agri-Nutrition_Resource_Manual-Kenya_MoA-2013.pdf
※補3:IDDSの8食品群 (”Guidelines for measuring household and individual dietary diversity” https://www.fao.org/4/i1983e/i1983e00.htmから筆者が作成)
(続く)